研究課題
記憶における隔たり検出原理を検討するために、1)事後情報が媒介される情報媒体の種類による効果の検討を行うこと、そして、2)そのメディアが第3者によって与えられる場合と質問紙によって行われる場合の違いを検討した。以上の検討を行うために、3種の実験を行った。実験1では、従来の事後情報効果のパラダイムを用いて、物語の性質を有する資格刺激をスライドにて被験者に提示し、その後、質問紙の形式で事後情報を提示した。その後に、2肢強制再認課題による記憶テストを実施した。その結果、事後情報の効果はターゲットとした3項目に関して、認められなかった。実験2では、実験1と同じ方法を採用した。ただ、事後情報は、ビデオでの目撃の感想という形の2人の女性が登場しての、会話に挿入するという方法によって提示された。結果は、3つのターゲットのうちの一つで事後情報効果を見出した。実験3では、実験2で採用した事後情報のビデオ内における会話を反訳し、ペーパーベースの読み物として被験者に与えることで、事後情報の伝達媒体を変化させての検討を行った。この点を除いては、実験2と同様の方法が採用された。結果は、3つのターゲットのうち2つで事後情報効果を認めるものであった。以上の結果から、事後情報の生起は、質問紙による事実の確認よりも、第3者の印象を受け取った場合に強力であることが明らかとなった。つまり、第3者からの情報として事後情報がもたらされると、その情報が一層記憶の形成に重要な役割を演ずることを示したものである。記憶への社会的影響がより強力な事後情報をもたらすことが明らかになった。さらに、媒体としては書かれた文字による効果が大きく、この点の記憶メカニズムについては今後さらなる検討が必要になろう。
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心理学評論 48巻3号
ページ: 258-273
Applied Cognitive Psychology (印刷中)