研究概要 |
研究の初年度であることから,研究を進めるために必要な装置の構築に重点を置いた.本研究では,ゴーグル式ビデオ・モニター(HMD)を用いて,変換視を実現する.被験者の眼前の映像を,HMDに付けた超小型カメラで撮影し,その映像信号から,[1]1秒遅延回路(SPORECOによる)を通した遅延映像,[2]上下反転映像(NEWOPTOを介して変換.以下も同様)[3]左右反転映像,[4]逆転映像(左右反転+上下反転)を生み出す装置を作成した.また,被験者に課す作業は,走路をはみ出さずにできるだけ速くトレースする,手動作による視覚運動課題と決定した.課題遂行中のペン先の動きを解析するため,ペン先の軌跡がひずみのない鮮明な映像として記録できる次のような装置を作成した.透明の机の上にトレース用紙を置き,ペン先が光源として発光するようにした.その明かりが,用紙を透過して透明の机の下に達することを利用して,ビデオカメラを机の下に上向き設置し,課題遂行中のペン先の軌跡をビデオ記録した.これにより,全体が暗い中で,光点が明るく光る運動画像データが確保できた.こうして収録したデータを,動作解析ソフトに取り込み,高速で大容量のパーソナル・コンピュータを導入して,毎秒30コマの時間分解能で画像解析でき体制を整えた.ペンライトによるコントラストの強い運動軌跡のおかげで,動作解析ソフトによる分析は,すべて自動追尾で行えることが確認できた. 以上の装置面の準備が整ったところで,トレースさせる図形パターンを,正方形を45度回転させた走路,すなわち菱形走路がよいと決定した.視覚変換がビデオ信号によるものであることから,課題中に適時,遂行者に知らせずに変換を切り替えることができる.周回走路であることは,作業継続中に切り替えるために都合がよい上,4方向の斜め軌道を同回数課すこともできるため,都合よいと判断した.
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