本研究では、6ヶ月から1歳半の乳幼児を対象として"生きている"という概念の獲得とその獲得過程を発達的に明らかにすることを目的として、これらの乳幼児に対して、最も人に身近なコンパニオンアニマルである犬を見せたときの反応の発達的変化を検討している。本年度は昨年度に引き続きデータ数を蓄積すべく実験を続行した。特に、生物と非生物を区別する重要な手がかりとなるであろう、運動の自律性と視覚的外見の影響を調べるため、実際に生きている小型犬(トイプードル)だけでなく、犬型ロボット(AIBO)や外見は犬ではないが自律的に動くラジコンカー、動かないが外見が犬に酷似しているぬいぐるみを刺激として用い、それらに対する乳幼児の反応を記録した。母親に被験児の左隣に間隔を約50cm空けて座るよう教示し、刺激は被験児と向き合うように2m離れた地点に置いたうえで、被験児の行動を3分間ビデオに記録した。乳児の行動を13のカテゴリーに分類し、3秒ごとの1-0サンプリング法で行動の生起頻度を測定した。その結果、犬型ロボットに対しては注視行動がもっとも多くみられたがネガティブな行動を示した乳児が多かった。犬のぬいぐるみにはすべての被験児がポジティブな反応を示しており、小型犬に対しては、注視、接触、母親を安全基地とした接近-回避行動など多様な行動が観察された。また、運動の自律性よりも外見の類似性の方が被験児たちの刺激への働きかけを規定している可能性も示唆された。これらの成果は国際動物行動学会や日本教育心理学会等で発表された。次年度もデータ数を蓄積するとともに、最終年度であるので結果のとりまとめと公表に向けての作業をさらに進めたい。
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