研究概要 |
1)触覚自己受容覚による方向の知覚:床面の水平知覚の研究と体表面上における垂直知覚の研究を行った.床面の水平知覚の研究では,環境傾斜装置を用いて,身体の姿勢(立位,座位,仰臥),年齢(若年者,高齢者)などが水平面の知覚にどのような影響を与えるのかを検討した.その結果,仰臥の姿勢では,水平面知覚の判断に大きな偶然誤差が生じやすいことが示され,高齢者は若年者に比べて恒常誤差が大きくなることが示された.他方,体表面上における垂直知覚の研究では,体表における垂直方向の知覚が,刺激部位(頭部や四肢)の方向の方向や被験者の注意の配分によって影響されることが明らかにされた(東山篤規). 2)錯視図形における方向の知覚:渦巻き錯視の錯視量の測定法を開発し,その結果,渦巻き錯視は最大10度の傾き錯視であることがわかった.これは,通常の傾き錯視の最大錯視量の2倍になる.また,傾き錯視と静止画が動いて見える錯視の関係の研究も継続しているが,その成果によれば,これらの間には正の相関が認められた(北岡明佳). 3)視方向と方向の原点に関係:二原点仮説を調べるために2実験を行った.実験1では,触運動原点位置を測定した後,開ループでポインティング誤差量を調べた.その結果,誤差量は触運動原点からの予測量と一致した.実験2では正中面上に置かれた刺激の方向の同異判断を,視覚-触運動感覚(見てから触る),触運動感覚-視覚(触ってから見る)という2つの条件で調べた.その結果,両条件では方向判断に一定の誤差が生じ,その誤差は2原点仮説を支持した.これらの結果は諸学会においてすでに発表した.論文を現在執筆している(下野孝一). 4)カメラ位置と顔の表情:当初計画では,表情表出者によって表出された表情を上下方向(正面,上,下)および横方向(斜め,横)から複数のカメラで同時に撮影し,それらの写真を刺激として表情認知の観察角度による影響を調べる実験を予定していた.しかし,研究計画を見直し,表情の観察角度の要因と照明方向(正面,上,下,横)の要因との関連についても実験条件に加えることとした.実際の撮影に当たっては,照明条件,カメラの角度の設定,ならびに複数のカメラの同期した撮影を実現することなどが予想以上に困難であり,撮影時期が予定より大幅に遅れている(尾田政臣).
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