継続年度にあたる本年度の研究では、申請した研究実施計画に基づき、大学付属幼稚園に在籍している児を対象として、昨年度と同様の方法でビデオによる行動観察がとりおこなわれた。同時に、観察対象児の親に対して、質問紙による親自身の共感性が測定された。すなわち、縦断的行動観察と質問紙の両方の研究道具を用いて、園児の具体的な行動と親の共感性との関連が組織的に検討された。 前者の行動観察法では、(a)自然観察と(b)実験観察の両方の場面が設定され、それぞれ5分程度のビデオ観察がおこなわれた。(a)自然観察は、2005年6月から7月にかけておこなわれ、園児のクラスにおける朝の自由遊び場面で、幼稚園児の集団での対人行動が観察された。一方、(b)実験観察は、2005年9月から10月におこなわれ、他の園児が室外活動時に、被験者である幼稚園児を対象として、室内でのお絵かき課題が実験設定された。具体的には2人1組の園児が入室5分後別の園児を入室させ、初めに入室していた園児の共感行動が、他の言語行動、視線行動などと共に観察された。後者の質問紙法では、情動共感性尺度を用いて、観察対象児の親自身の情動面と認知面における共感性が測定され、4歳児75名と5歳児88名のデータが得られた。 昨年度観察された園児の行動と、親や幼稚園教諭による園児の共感性の関連については、2005年5月のアメリカ心理科学会と2005年8月のアメリカ心理会で発表された。また園児と親自身の共感性との関連については、2006年5月のアメリカ心理科学会で発表することになっている。本年度得られた園児の自然、実験、両場面での行動観察データは、現在のところ整理されコード化されている段階である。したがって最終年度にあたる平成18年度は、園児についての昨年度観察された行動データと本年度の縦断的行動データ、ならびに、幼稚園教諭や親自身から得られた質問紙データなどを併合して、集団教育現場における子どもの共感性に関しての発達的検討をおこなう。
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