本研究は、1990年代後半から取り組まれ、とくに2000年以降具体的に展開している地方教育行政改革及び学校管理運営改革に注目し、その特徴は教育行政の地方分権化と学校運営における自主性・自律性の強化にあると捉えた。本研究ではこれを「地方分権的教育行政」及び「自律的学校運営」と呼び、それらが教育の地方自治と学校自治にいかなる意味を有するかを検討した。 本研究は教育基本法改正並びに地方教育行政の組織及び運営に関する法律及び学校教育法め改正が行われた時期とも重なったが、これらの法改正においては文部科学大臣の権限強化とともに、国が用意する基準に基づいて教育委員会や学校の成果を検証評価する仕組みが新設され、地方分権改革の下で教育の地方自治及び学校自治に逆行する動きが見られた。これにより、地方分権改革は教育の地方自治と矛盾し、実質的には中央政府の権限強化ともに、地方公共団体には成果に対する結果責任が求められるとの本研究から得られた知見の正しさが確認された。 また、学校制度的基準の弾力化や教育特区制度の展開に見られるように公教育制度における規制改革が展開されている点に注目し、それらの展開を検証することにより、公教育の規制改革とその下での教育制度改革には民主主義的合意形成の契機が弱いことを明らかにした。 なお、新教育基本法で新設された教育振興基本計画制度が地方教育行政にいかなる影響を与えるかを明らかにすることは本研究にとって重要な課題の一部であった。しかし、制度の展開がおくれているため、これに関する研究は今後の課題とする。
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