家族における人間形成のあり方を研究するのが本研究の目的であり、そのための史料として自伝を使うことにした。.すなわち、1840年代から1910年代に生まれた人々が執筆した自伝を読みながら、そこに描かれている育ち方に着目し、家族における人間形成のあり方を研究していった。 今年度は、特に研究開始年度ということもあり、まず、研究方法についての検討を行った。その結果、自伝執筆者の家族構成、親の職業、地域性、階層性、学校教脊に対する親の態度などについて、留意して分析を加えていくことにした。具体的にいえば、(1)子ども期:生育儀礼のあり方、人生の区切りの付け方、子ども期に対する意味づけ、子どもの成長に対する大人たちのまなざし、(2)環境としての家族:核家族・直系家族・拡大家族・崩壊家族という家族形態のあり方、本家・分家といった家族同士の関係性、親の職業や俸給生活・家業といった家族の生計のあり方、性別役割のあり方、奉公人の有無、親族との絆、兄弟姉妹の数、大人の子どもとの距離の取り方、(3)家族・親族の影響力:期待、早期教育、学校選択、生き方への示唆、しつけ、大人の個性と風格、性別による相違、(4)進路選択と学校:進路選択の主体、学歴の意義、階層移動の実態、教師の影響、(5)地域性:大都市・地方都市・農村・山村・漁村という地域特性、地域と家族との関係性や密着度、などに注目して自伝を分析すべきことが明らかになった。
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