本研究は、日本の伝純的な「学びの文化」の中核に位置する「趣味・習い事」文化に着目し、それを基盤とする生涯学習が、主に「男女共同参画」「異文化共生」などの現代的課題にどのように応えることができるかという観点から、新たな学習プログラム研究開発への手がかりを探るものである。研究の趣旨は、研究代表者が携わった国立女性教育会館(ヌエック)を拠点とする国際共同研究「女性の生涯学習に関する日韓比較研究」および同シンポジウムの中で、女性教育・生涯学習関係者と共有した問題意識と深く関わる。戦後日本の女性教育実践は、生活関連の学習から出発したが、その後の実践動向や先行研究においては、女性の生涯学習(社会教育)を、「余暇、教養」のための学習と女性問題学習や女性学学習など「意識変革」に関わる学習とに大別して考える傾向が顕著であり、主に後者が重視されてきた。現在の(女性の)生涯学習では、多様化・高度化するニーズの充足を掲げた「趣味・生活関連」学習が主流をなす一方、「社会参画」のための学習機会は、受講者数でも内容・方法面でも多くの課題を抱えている。これらを踏まえ、本研究では、飽くまでも「男女共同参画」「異文化共生」の視点を持ちながら、当面は、日本における「趣味・習い事」文化とその学習の背景、経緯、現状について、多面的に考察することから出発した。平成16年度は、(1)芸道・遊芸・職人文化など・日本的な「学びの文化・伝統」の経緯と現状についての文献調査、フィールドワーク(京都の舞妓養成、友禅染等の工房、伝統工芸専門学校など)、(2)「趣味・習い事」学習提供機関(主にカルチャーセンター)の実態と動向に関するインターネット調査、(3)カルチャーセンター関係者および公民館関係者へのヒアリング調査(東京都・大阪市・新潟市)、(4)地方都市(新潟市)における自主学習サークルヘのアンケート調査(3月末で回収率約30%)を行った。当初本年度に予定したカルチャーセンターへのアンケート調査や受講者インタビューは、企業戦略や個人情報等の関係で、「趣味・習い事」文化の全体像を捉える基礎作業、カルチャーセンター関係者等へのヒアリングによる実態把握、自主学習グループの実態調査へと、軌道修正を行った。
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