研究成果報告書の概要について 2006年後半期は北海道、福岡などでいじめ自殺事件が頻発したように、本研究のテーマでもあるいじめをはじめとする現代型問題行動への学校や行政のこの間の対応を見直さざるを得ないことを物語っている。 報告書は1・現代型問題行動研究への課題意識、2・研究方法と研究過程、3・不登校問題への対応原理と北星学園余市高等学校、4・児童生徒の暴力と発達障害、5・いじめ問題とピア・サポート、6・まとめの各章から構成している。 とくに、北星学園余市高校へは予備調査を含め4度の調査を実施し、この学校の教育力について緻密な調査研究を行った。その主要な成果は和歌山大学教育学部教育実践教室『北星学園余市高校調査報告書』(2005.11)にまとめている。また本研究においてはイギリス、オーストラリアにおけるいじめ対応を参考にして、いじめに対応できる「ピア・サポート・マニアル」を作成し、大阪府・岬町立岬中学校において選択授業(11時間)において実践し、相当の成果をあげることができた。この成果に関しては『いじめ問題とピア・サポート実践-大阪岬中学校・第2学年選択授業における実践と省察-』(2007・3)に詳しくまとめている。いじめ問題への対応策としてのピア・サポート・マニアルならびに実践研究(アクションリサーチ)に関しては、NHKの全国放送(2006年11.29)ならびに朝日新聞(2007.2.12)紙上で紹介された。 報告書の全体的なミッションは、わが国の生徒指導における古典的指示的方法から児童生徒の実践的能力形成に主眼をおいた生徒指導への転換をどう学校現場が受け入れられるか、そのためには大学における教育研究と学校現場における実践研究とがコラボレートすることが不可欠であることを結論として導いた。
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