本研究の目的は、日本およびドイツ連邦共和国において、初等教育および中等教育での学力向上がどのような理念に基づいており、どのような政策によって実現されようとしているのかについて、学校の組織改革の取り組みに焦点を当てながら、日独での比較研究を進めることをとおして明らかにすることであった。とくにドイツにおける全日制学校の拡充をおもな研究素材として取り上げ、先行研究の他に、現地での学校訪問や研究者や教育行政機関の関係者へのインタヴューをとおして情報収集およびその分析に取り組んだ。 その結果、明らかになったのは次の3点である。第一に日独両国に共通して言えることは、学力向上の取り組みが中央集権的な政策によってなされているということである。第二にドイツの全日制学校の拡充に限定して言えば、全日制学校の拡充は学校の役割変容を示すとともに、学校生活への適応などを重視しているという点で学力向上における基盤整備の意味合いが強いということである。第三に日本と大きく背景を異にする点として、全日制学校の拡充においても見られた点であるが、ドイツでは移民を背景とする生徒への対応が学力向上において重要な課題になっているということである。 なお、4年間に及ぶ研究期間内では、ドイツにおける教育政策の展開が激しく、ドイツにおける最新の動向を把握することに大半の時間が割かれたため、ドイツと日本の現状把握を基盤とした日独比較までは十分に論じることができず、仮説的な論述に止まらざるを得なかった。日独比較については、今後さらに情報を収集するとともに分析に時間をかける必要がある。
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