研究概要 |
現在,諸外国では大学が教師の職能開発を援助する一つの機関となっている。日本でも,国立大学が法人化し,大学により充実した地域貢献が求められ,教員養成大学・学部として、地域の学校教員の指導力の向上のために,教員研修に積極的に関わることができる,関わらざるを得ない事態が生じてきた。本研究では,大学が現職教員研修に取り組むためのシステムを研究開発することを目的とし下記の研究を行った。 まず,大学の現職教員研修への取り組みの現状を調査し,これまでに実施してきた大学が教員研修に取り組むことへの現職教員の意識調査研究等も踏まえて,大学が取り組む現職教員研修の課題と条件について考察した。 次に,「教師の資質、使命感と力量伸長の契機」,「教師の研修観」についての質問紙調査,現場教員へのインタビュー調査等を実施した。平行して,教育委員会との連携の中で実施されている教員研修を観察する機会,実際に教員研修を企画実施する機会をもった。 これらの一連の研究を通して,明らかになったことは以下のことである。 第一に,教員の主体的な研修を促すために,大学が取り組む研修では,教員の直截的なニーズ,すなわち教員が対処に迫られている教育の課題の解消やすぐに役立つ実践的なものの提供に応えるだけでなく,十分には意識化されていない個々の教員の本質的なニーズを掘り起すことが重要である。 第二に,研修が教師自身の自己の実践への省察を促すものであることが重要である。そのような実践の省察を促すためには,事例研究の開発が鍵になる。 第三に,教員の職能成長のタイプに注目したシステムが必要である。すなわち,教員の職能成長が停滞型である教師についてはその研修観を改善できるような研修,また,移行型の教師については深化型の職能成長のタイプへの移行を可能にするような研修,そして,深化型の教師については,彼らを支え自己課題についてさらに掘り下げていけるような研修を,企画・実施・評価することができる教員研修システムの構築が必要である。
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