研究課題/領域番号 |
16530517
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
黒崎 勲 日本大学, 文理学部, 教授 (70012573)
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研究分担者 |
大田 直子 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (40211792)
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キーワード | 学校選択 / 学校参加 / 教育委員会 / ガバナンス / マネジメント / 学校運営協議会 / 地方教育行政 / 学校の自律性 |
研究概要 |
本年度は3年計画の初年度として公立学校教育の質の改善に取り組む教育行政の主導性についての基礎的な研究を行った。中間的なものではあるが、学校選択制度が学校教育の質の向上をもたらすメカニズムとして機能するためには、学校選択制度が地方教育行政の機関である教育委員会が主導するプログラムとならなければならないという結論が導き出されている。 もっとも顕著な成功例と目される品川区の学校選択制度を中心とする学校改革の分析からは、次のような結論を導くことができる。まず、学校選択制度は改革の万能薬でも特効薬でもない。しかし、それは伝統的な公立学校制度を突き動かすための触媒である。選択制度は「ひとつの学校から始め、学校とともに進む」という筋道で学校を改革を進めるものである。品川区の教育改革の特徴となっているトップダウンとボトムアップの結合という手法も、選択制度を媒介にすることによって可能になっている。家庭による学校選択が個々の学校の問題の所在を明らかにすることになり、その問題の解決のためのドップダウンを受け入れやすいものにする。逆に家庭によって選択されているという事実は教育委員会に対して学校の側からのボトムアップの力を支えるのである。 さらに品川区の学校改革の事例の分析成果を踏まえるならば、教育行政の側の主導性と学校および個々の教職員の側の自発性とをどのように調和させるかが改革の成否を分けるポイントがあることが認められる。この点において、学校選択制度は「自分の学校を変えることができる力がある」と確信しながら公立学校と教育行政の仕組みに災いされて力を発揮できないと感じている教職員にその力を発揮させる機会を保障するものとして提示されることが必要であるとの知見が得られた。
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