研究概要 |
学校改革の鍵とするような主張とともに実施されている学校選択制度についての「実証」的研究が共通して指摘するわが国において現在すすめられている学校選択制度の弊害に関する分析を再分析し,先行研究の方法的な問題点を批判的に検討した.選択動向の固定化というのが,先行諸研究が指摘する学校選択制度の弊害であり、問題点だが,それらの研究が対象とするのは単純な市場原理の導入を制度原理とする学校選択制度であり,別の制度原理による学校選択制度の可能性について検討するものではないことを明らかにした. 現在実施されている学校選択制度は単純な市場原理の導入を制度原理とする学校選択制度であるが,そうしたものの実施過程においても,もう一つの学校選択制度である抑制と均衡を原理とする学校選択制度の可能性を窺わせる事例・エピソードが現れている.これらの一層深い解明が今後の研究課題となる. 本研究では特に学校選択制度の成功事例と考えられるニューヨーク市イーストハーレムにおける学校改革の動向について系統的に検討の素材にしてきたが,ニューヨーク市ではこの間,教育行政制度の大幅な改変が行われた.ニューヨーク市において選択の理念に基づく学校改革に取り組んできた当事者へのインタビューを通して、ニューヨーク市における教育行政制度の改変の意義と問題点を明らかにした。 学校選択制度の有効性は,「選択」の機能の自動的な所産なのではなく,公立学校における多様な実践と努力を学校改革に結実させるうえでの触媒として役割を果たすという視角から理解されるべきであるというのは本研究の結論である。
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