本年度の研究課題は、家族の認知症介護体験に関する資料に基づき、成人に対する生涯学習という枠組みを用いて、家族介護者の認知症介護実践力の変化と関連する要因を質的に分析することである。分析のためには、以下の資料を用いた。 (1)呆け老人をかかえる家族の会(以下「家族の会」)の会報地方支部版(高知・福岡)について、1995年1月から2004年7月号までを収集・整理した。この中で、投稿者が明記されている記事の中から、介護体験談が2回以上掲載されているもの(25人分)を抽出し、内容の変化について分析した。 (2)「家族の会」地方支部(高知・福岡)の世話人代表者に対して、会報編集および集いの実施について、聞き取り調査を行った。 (1)および(2)の結果をふまえて、会報の掲載記事のみでは介護の状況および認知症高齢者の状況が不明確であるため、家族介護の経過を逐次的に記述してある認知症介護体験に関する出版物を収集し、分析を行った。 (3)「自分史」および「ふだん記」というジャンルの中で、認知症介護体験について記述している書籍の出版状況を把握するために、春日井市文芸館の日本自分史センターおよび帝京学園短期大学図書館を訪問し、担当者に聞き取り調査を行った。同時に、書籍を閲覧し、内容について把握した。 (4)「家族の会」会報全国版および地方版(高知・福岡)の1995年1月から2004年7月号の記事の中で、介護体験談として紹介されている書籍20冊の中から、「家族の会」地方支部および同様の組織が編集を行っており、介護体験が詳細に記録されている5冊を選出した。現在、この5冊に掲載されている65人の介護体験談を詳細に分析し、先行研究において宮上が提示している「家族の痴呆介護実践力の変化プロセスモデル」の検証を行っている。
|