研究概要 |
図像資料を用いて近代ヨーロッパの子育て習俗の社会史的変貌を明らかにしようとする本研究は、研究期間を3年に設計しており、その第2年度に当たる2005(H17)年度は、前年度にすすめた4つの作業、すなわち(1)これまでに収集していた文献資料、図像資料の分類、(2)海外の主要な美術館のカタログ、図像資料集、コレクション類の調査研究、(3)民俗資料、版画資料の収集、(4)イギリスの中世から近代の図像資料のオークションカタログの調査研究、という作業項目をふまえて、2005年度には特に、中世から近代に書けて、イギリスの子ども観史の図像資料研究と並行関係にあるオランダ(ネーデルランド)の15世紀から18世紀にかけての子ども観の図像資料研究の動向を探るとともに、基本的な図像資料の収集をすすめた。 蒐集した文献資料及び図像資料のうち、特にイギリスとネーデルランドに関する資料についてはその価値が高いので集中的に調査研究した。イギリスに関してはNicholas Oremeによる子ども観と教育文化史に関する図像資料研究に注目し、オランダに関してはJ.B.Bedaux & R.Ekkartの子ども図像史研究の成果を集中的に検討した。これらの代表的な研究は、これまで一般の美術史では紹介されることがなかった子どもの生活史、親子関係史、教育文化史に関する重要な図像資料を含んでおり、これらを教育の歴史人類学あるいは教育の社会史研究の視点から精査に分析・解釈する意義は非常に高いことが確認できた。また、2004年に公刊されたP.S.Fassを編集代表とするEncyclopedia of Children and Childhoos in History and Society,3volsは、子どもの教育と発達の社会文化史研究の現時点での世界的な到達点を示しており、本研究の推進に当たって非常に示唆的な研究情報を内包している。また、この百科事典の中にも重要な図像資料がいくつか含まれており、子ども観の歴史人類学をすすめるいくつかの研究項目のガイドラインは、本研究の方向性と意義を再確認することができた。
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