研究課題
基盤研究(C)
本研究は、「新しい社会史」「歴史人類学」の方法を用いて、ヨーロッパ近代以前と以降における「子ども観」の持続と変容を、「子育て」現象に焦点を当てつつ、多様な図像資料によって跡づけ、その意味を教育学的に考察しようとするものであった。研究計画の第一段階は、子育て習俗の図像資料の蒐集であり、図書館、美術館、カタログ理を対象に蒐集を進めた。第二段階は、図像資料の整理と分類であった。この整理・分類の過程では、必要な時代区分、社会階層区分、領域区分、図像そのものの性格特性の分析などを進めることができた。そして、第三段階は、図像を意味解釈する際の視点の構築であった。これは、これまでに進められてきた子ども観の社会史研究の先行研究における方法論を検討する中で追究した。その結果、「実態としての子ども」(Children)と、「理念としての子ども期」(Childhood)を区別して図像資料の分析に当たることが必要であることが分かった。子ども観を分析する上では、資料の性格を見極めつつ、生活実態の中の子ども、あるいは実態と事実の文脈の中で表現される事実上の(defacto)子どもの姿そのもの(Reality of Children)という視点と、社会全体が心性として抱く子どもに対する理念や観念(Idea of Childhood)、あるいは像(lmages of Childhood)というものを子ども観あるいは子ども理念という視点の二つに分けて意味解釈することが必要なのである。研究成果報告書では、このような分析視点を構築した上で、いくっかの代表的な資料の分析を試みた。今回の研究は、子ども観研究を図像資料を用いておこなうことに特色があったが、蒐集した資料は多様な研究テーマを触発する広範囲に及ぶ内容を持っているので、今後はこれらを活用したさまざまなモノグラフをまとめていく予定である。
すべて 2007
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青山学院大学教育学会紀要 教育研究 第51号
ページ: 1-26
Educational Inquiry Bulletin of the Association for Educational Studies in Aoyama Gakuin Association for Educational Studies in Aoyama Gakuin Vol.51