1、本研究は成人前期女性のキャリア形成と、そのための学習支援のあり方の探求をテーマとするものである。本年度は、当該女性自身がどのようなキャリア展望を持っているのかについて日本、イギリス、オランダにおけるインタビュー調査を行った。 2、調査は20歳代前半から30歳代前半の女性を対象とし、イギリスで16名、オランダで17名、日本で14名の計47名に対して実施した。主な質問項目としては、1)現在の仕事の状況と仕事の選択(キャリア・カウンセリング)について、2)将来のキャリアに対する展望とそれを実現するための学習について、あるいは獲得しようとしている資格について、3)社会的な条件について、4)将来設計における優先事項、特に、結婚や出産等についてはどのように考えているか、という点を中心にインタビューを実施した。 3、イギリスの女性たちへのインタビューに当たっては、高等教育振興政策の推進によって高等教育機関への進学がとりわけ女性において著しく上昇していることから、高等教育を受けた女性を主な対象として選定した。インタビューの結果については、大学、大学院修了どちらの女性においても、「ファミリー・ファースト(家庭第一主義)」を基本的なポリシーとして掲げる女性が多かった点が特徴である。この原則をおきつつ、高等教育機関で学んだ専門を生かして、子育て等でいったん中断した後に再度柔軟なキャリア形成を目指すという回答が目立っている。したがって、家族の形成、出産についても積極的なイメージを抱いている。 4、オランダの場合、1980年代からの労働政策の展開により、パートタイムを含むさまざまな働き方のコンビネーションによって労働を分かち合ってゆこうとする社会的な風土が見られることから、あえて多様な教育的背景を持つ女性タイへのインタビューを実施した。結果はやはり多様なキャリア展望を聞くことができた。そうした展望を実現するための手段として、各種職業教育への信頼が高いということも特徴として明らかになった。 5、日本におけるインタビュー結果の特徴を一言で表現するならば、「漠然とした社会に対する不安」が将来展望を不明確なものにしているという点である。 以上の結果をもとにして更に考察を深め、次年度はキャリア展望を実現するための生涯学習機会の提供についての研究を進める予定である。
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