研究概要 |
2004年8月20日から9月12日にかけて、イングランドおよびスコットランドに赴き、(1)レスター大学労働市場研究所(University of Leicester)のスタッフと、若者の雇用への移行動向や企業の採用活動に関する調査についての研究計画や実施方法について検討するとともに、(2)英国の大学の研究者、スコットランド政府の若者支援政策担当者、コネクションズ(Connexions:地方の若者支援機関)のスッタフへの聞き取り調査等を実施し、以下のことを明らかにした。 (1)イギリスでは1990年代以降、新たな経済的・社会的変化によって社会的不平等が拡大し、他方、雇用への移行に際し資格や教育歴等の重要性が増大し、教育システムへの依存が高まり、結果として、若者の社会的背景(親の経済力や職業、居住地域、所属するエスニシティ)にもとづく安定した職業獲得のチャンスやそこでの労働条件における不平等が著しく拡大している。特に、若年労働市場において、かつて存在した熟練工や事務職といった中位水準職種への安定的な雇用への移行のルートが消滅ないしは縮小する一方で、販売職やパーソナルサービス職など下位の不安定な職種が拡大し、資格レベルの低いあるいは不利な社会的背景を抱えた若者の雇用への移行は不安定かつ著しく困難の伴うものになっている。 (2)イギリスでは、雇用への移行にもっとも大きな困難を抱えた若者として、いわゆる、職業にも教育にも訓練にも携わっていないニート(NEET : Not in Employment, Education or Training)の存在が、社会問題としてクローズアップしされ、すでに大規模かつ総合的な若者支援政策が進められている。従来行われてきた彼らに関する調査、およびコネクションズ・サービスと呼ばれる地方の若者支援機関への聞き取りによって、ニートの現実態、無業、非就学状態に至るまでの背景やプロセスとともに、彼らに対する支援政策の実際について解明しつつある。
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