研究課題/領域番号 |
16530540
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
佐藤 郡衛 東京学芸大学, 国際教育センター, 教授 (20205909)
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研究分担者 |
高木 光太郎 東京学芸大学, 国際教育センター, 助教授 (30272488)
見世 千賀子 東京学芸大学, 国際教育センター, 講師 (80282309)
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キーワード | 海外子女教育 / 日本人学校 / 補習授業校 / 東アジア圏域 / 国際結婚 / アイデンティティ |
研究概要 |
平成17年度の研究目的は以下の3点である。 第1は、韓国、台湾の日本人学校から帰国した教員と1昨年度に収集した資料をもとに、国際結婚の子ども、ないし二重国籍を保持する子どもたちの教育要求とアイデンティティの特徴を把握すること。第2はアメリカにおける日本、韓国、台湾の海外子女教育の実態を把握すること。 その結果、以下の点が明らかになった。第1は、韓国、台湾の日本人学校のうち、国際結婚の子どもたちが最も多い台中日本人学校に焦点をあて調査した。その結果、中学生段階では約70%が台湾の高等学校への進学を希望していること、そして、そのアイデンティティは「台湾か日本か」といった二分法では把握できない状況があることが明らかになった。第2は、アメリカカリフォルニア州ロサンゼルス地域での実態調査を実施した。その結果、ロサンゼルスには「韓国国際教育開発院」のもとで運営されている補習授業校が54校あること、生徒の多くは永住希望者だが「韓国系アメリカ人」として自らのアイデンティティを保持しようしていることなどが明らかになった。台湾系の中華学校は「南カリフォルニア中国語協会」に登録されているものだけで100校を超えている。中華学校は、移民の子どもの教育のための学校であり、韓国系の学校とは性格を異にしている。「韓国」「台湾」というエスニシティを保持するために、海外子女教育が機能している反面、「白人」と対峙するために、「アジア系アメリカ人」というアイデンティティの位置取りをしている生徒もおり、そのアイデンティティは複層的であることなどが明らかになった。 以上の動きは、国家という枠組みに縛られながらも、その枠にとどまらないアイデンティティの取り方をする子どもたちがでてきていることを意味する。グローバル化という状況のなかで海外子女教育は国家だけでなく、「東アジア圏」をも視野に入れた教育のあり方を構想する必要があることが明らかになった。
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