前年度の草の根レベルの教育計画におけるNGOの専門的機能についての理論的検討ならびにインドにおけるフィールド・調査を踏まえ、今年度は南アジアと比較しながらサブサハラ・アフリカを対象とした研究を行った。タンザニアをフィールドとし、文部科学省、および基礎教育プロジェクトにかかわる国際援助機関、国際NGO、全国レベルの教育関係NGOネットワーク、地域NGOそれぞれの基礎教育普遍化計画についての基本的方針、具体的活動、現在の課題等についてのヒヤリングを行うとともに、地方レベルの教育関係NGOの活動の現地調査を行った。 タンザニアにおいては基礎教育普及計画の策定・実施は政府の責任であると考えられ、スクール・マッピング等の手法によるコミュニティ・レベルの教育計画は教育行政の地方分権化のなかで推進されていることから、教育計画の策定にNGOが直接関わることは少ない。これは、タンザニアの教育関係NGOの歴史は浅く、1990年代になってから活動を開始したものがほとんどであり、またコミュニティ開発、環境保護、ジェンダー等の他の社会開発分野で活動してきたNGOが教育の重要性を認識し、教育分野に活動を発展させたというケースが多いためであると考えられる。 他方、近年になって国際NGOの支援の下に全国レベルの教育関係NGOによるネットワークが構築され、NGOが独自に行った調査結果に基づいて、政府による教育計画策定に際しての政策提言を行うなどその影響力が強まっている。また、コミュニティ・レベルでは、学校運営に地域住民が参加する「School Committee」に対するCapacity Building にNGOが積極的に協力するとともに、各NGOの目的に応じて学校の課外活動を支援している。
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