本研究の目的は、日本の中学校において、生徒たちの基礎学力はいかに形成されているのかについて、学校内のフィールドワークと、質問紙調査によって明らかにすることである。 3年計画の2年目である本年度は、第一に、前年度に実施した質問紙調査とフィールドワークの分析を引き続き行った。その結果、前年度に明らかにした、生徒の出身家庭の文化的・経済的な状況によって学力に格差があることに加え、1学力だけではなく、授業への取り組み方や学習への意欲の格差にも、家庭状況が関わっていること、また、2意欲格差に対する家庭状況の規定力は、学校によって異なっており、格差が相対的に小さい学校が存在していること、さらに、3基礎学力の形成において、それぞれの学校における実践のありようが重要であり、格差の小さい学校では通常の授業だけではなく、総合的な学習の時間などにも力を入れていることなどが新たに明らかになった。 第二に、前年度に引き続き、調査対象校におけるフィールドワークを継続するとともに、調査対象校の近隣の中学校をも対象とした質問紙調査を行った。なお、質問紙調査は、生徒の属性、意識、行動を尋ねるアンケート調査と、一般的な学力調査に加え、今年度は新たに思考力を測るための学力調査という3つを実施した。これらの調査を組み合わせ、生徒の学力を規定する要因についてさらに検討し、加えて、前年度からの変化についても考察する。なお、今年度の質問紙調査は、平成18年2月末から3月にかけて実施したため、分析の結果はまだ出ていない。
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