平成18年度は主に以下の2点について研究を実施した。その概要は次の通りである。 1 教師研究に限らず、近年のライフヒストリーに関する内外の研究論文・著作などを広く収集し、方法論の検討を行った。とくに教師研究、教育研究においては実証主義的な立場によるライフヒストリー研究が行われてきた。近年の社会学におけるライフストーリーを重視する構築主義的立場など多様な文献を検討し、その可能性と限界について指摘した。 2 これまでに引き続き、教師のライフヒストリーのインタビューを行い、データを収集、分析した。今年度は以下の3つの視点からインタビュー対象者を抽出し、インタビューを行った。1)教育改革に中核として取り組んだ教員、すなわち総合学習の時間の実施や学校改革の中心となって活動した教員。2)教員組合の中心として活動を続けてきた教員である。これらの教員の多くは、たとえ学校の中で中心的な役割を果たしていたとしても、教育改革を所与のものとして受け入れていることを明らかにした。つまり、教師にとって教育改革は環境の変化の一つであり、それを無批判に受け入れることで、環境の変化に対処しようとしているのである。3)分析対象を広げ、幼稚園の教員に対してもインタゼューを行った。幼稚園は少子化の影響、私立園の多さなどもあり、現在の教育改革以前に市場原理による園間の競争が行われていた。それゆえすでに各園が独自の改革を行い、それを保護者にアピールする場を設けている。このような幼稚園の特徴は今後の教育の市場化の行方を見る土で重要であろう。 以上の成果は平成18年度の中国四国教育学会において報告し、山田他「教育の市場化時代における教師」中国四国教育学会編『教育学研究紀要』第52巻として公表した。またこれまでの研究成果とともに報告書を作成した。
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