子どもの諸問題は、地域や家庭の変化を背景にし、複雑に絡み合って現出している。この点から考えると、学校教育の<肥大化>として批判の対象となってきた「日本型学校」は再評価されるべきである。一方、カウンセラー等専門家の配置に見られるような、多様な専門家の存在は、一人の子どもについての情報分散をもたらし、かえって指導困難を高めるという問題(教師と他専門家との分業と協働)を孕んでいることが指摘できる。 本研究は上述したような状況を踏まえて、変容する社会における今後の学校の在り方を探り、学校と地域・家庭、関係諸機関との連携の検討を踏まえ、学校組織成員の誰がどのように、それを担うのか、その際の教師の役割は何か、という問題を考察することを目的としている。 本年度計画・実施した調査研究のうち、「修復的司法」の取り組みについての情報収集(ミネアポリス教育委員会・コロラド州のスクールメディエーションセンターのフォローアップ調査、IIRP<International Institute of Restorative Practice>世界会議で新たに得られた資料)からは、いくつかの知見が見いだされた。(1)わが国のみならず多くの先進国で、家庭背景の多様化により、様々な問題が集中して現象する子どもが一定数存在しており、その対処が、学校や地域全体の共通課題となっていること(2)その対処法として、厳罰的指導に代わり修復的司法が有効であること、しかしながら、(3)修復的司法の実質的担い手となり、学校や教師を支援するような中間集団が、わが国では殆ど見られないという問題があること、などがそれである。またこれらを踏まえ、各機関・各専門家の<繋ぎ役>をどのようにして創出するかが、わが国の課題であることが明らかになった。
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