研究概要 |
イギリス新労働党政権の教育政策の特質を、サッチャー保守党政権の教育改革政策と対比させながら、これを新しい教育政策理念の登場として描き出した。すなわち、両者とも従来の公費および公務員による公共サービスの供給という方式に大幅な変更を加え、「品質保証国家」と呼ぶことが可能な新しい国家をもたらしたけれども、保守党政権のそれは、市場原理、競争と自然淘汰を目的として機能させようとしたことが明らかになった。他方、新労働党政権の場合,市場原理はむしろこれまで発言力がなかった人々に発言力をあたえ、それを実質化させること、またそれによって、当事者性を高めることで、生涯学習社会構築のための基礎学力向上を実現しようとしたこと。また、スタンダードとテスト、および査察等の結果の公表は、自然淘汰ではなく、問題点を析出し、解決策を実施するために活用されたということが明らかになった。これは保守党の「品質保証国家」とは全く異なるものということができる。 しかしながら、この体制は、メリトクラシー的社会を構築するために為政者によって明確に作り上げられたという点については、現代社会と教育を考える上でさらなる問題を抱え込むことになる。この点については今後の検討課題とする。
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