2004年度は本調査の初年度となるため、前半(6月-9月)で調査対象校と生徒・保護者への依頼および承諾をえる作業を実施し、後半(9月-翌年1月)で、実際にフリーター産出の割合がきわめて高い進路多様校2校(宮城県北部の普通科1学級と東京都三多摩地区の普通科2学級)の3年生(約90名)に対してアンケート調査と聞き取り調査を実施した。その際、調査の許諾に承諾書面を取るなど慎重を期し、また、実査の実施と分析整理においても、調査作業者に守秘義務等取り扱いに対する注意を喚起した。 結果の特徴をみると、アンケート調査時点では、進学・専門学校希望が実際の進路より高くなっている。その一方で、フリーター志望や未定者はきわめて少ない。非進学層のライフスタイルは、進学希望者に比して、友人関係の充実感が強く、勉強への意欲に乏しい。また、家庭の満足度も低い。学校が機会均等によって家庭・社会の文化的偏差を払拭しようとしてきたこれまでの努力が、こうした高校では成功しているといえず、むしろハンデキャップの問題を一層顕在化させているとみられる結果である。 とくに、エスノグラフィーやインタビュー研究は、非進学層の分析には有効であった。というのは、書くことに嫌悪感がある生徒でも、語ることによって伝えたいことがあり、またそれが感受的性格を強く持っていたからである。例えば、就職先を問われて「ビミョー」という回答をした生徒があり、その宙吊りで曖昧な気分を聞き取ることもできた。こうした調査から、進路を意思決定過程と位置づけることから成長への連鎖的な出来事へと読み変える必要があると感じている。 書籍・資料や海外のキャリア教育の動向にも目配りしながら、高校段階での進路選択への新たな理論枠組みを与えていく努力を今後も行いたい。また、卒業後の生活世界を聞き取ることで、進路の生徒自身にとっての意味づけに肉薄しそれを読み解きたいと思っている。
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