本研究は、東京都三多摩地区及び宮城県郡部にある進路多様校の高校3年生を対象にパネル研究を実施し、特に「フリーター」となる若者の家庭的地域的背景と進路選択にかかわる価値観や人間関係、ライフスタイルを分析してきた。 2年目の今年度は、対象者(約90名)の実際の進路を踏まえ、7・8月の郵送調査と同窓会開催時における聞き取り調査や電話調査などを実施した。その結果、(1)就職した者でもすでに初職を離職した者が出ており、またその事由は人間関係や仕事の辛さなどから語られること、(2)進学した者の中には、専門学校から大学への転学などを模索する者もおり、通学時間や授業内容の難しさなどを訴える者もあること、(3)フリーターあるいは浪人の進路の者には、今の立場の説明困難さや行き先確保への不安などが語られやすいことがわかってきた。 同時に、この知見を踏まえて、今後のパネル調査を継続していくための方法論や理論的視点を学ぶため、フリーターや失業者の研究支援を行っているドイツとイギリスの研究・支援機関を訪問し、専門家とのディスカッションを行い、資料を収集した。とりわけ、コネクションズ(英)では、フリーター・ニートへの聞き取りから支援を企画する部署の専門職員から、インタビューの重要性について、貴重なサジェスチョンをえた。 昨年度の調査結果に、これら知見も加味して、日本教育社会学会第57回大会で院生とともに、「進路多様校におけるフリーター産出過程の継時的研究(1)」と題して発表し、好評を博した。また、日本子ども社会学会第12回大会でも、類似した内容で発表した。さらに、中間報告書も作成した。来年度は、継続研究を発展的に遂行する予定である。
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