アニマシオン理念の淵源は、大戦間期の民衆教育アソシアシオン(NPO)の活動に遡るが、公共性を担うものとしてその活動の政策化が図られるようになったのは、フランス社会の急速な都市化が進んだ1960年代である。それは都市化と結びついた新たなニーズに応える社会プロジェクトとして取り入れられたのであった。今日もなおアニマシオンが都市部を中心に住民ニーズに応える教育プロジェクトとして展開されているのはこのためであり、このことはパリ市のアニマシオン活動の取り組みにおいて典型的に見ることができることを指摘した。と同時に、そこにはアニマシオンの実現をめぐってのアソシシアシオンとパリ市との間の葛藤が見られることを示した。 パリ市では、学校外教育の活動プロジェクトとして2002年から「学校外活動向上計画(Le plan Qualite Periscolaire)」を展開しているが、その優先事項がアニマシオン活動の推進である。具体的には(1)大幅予算の計上、(2)各学校へのアニマシオン相談員の配置(3)アニマトゥールの正規雇用の促進(3)従来アソシアシオンが運営していた余暇センターの市立化(4)テーマを特化したパリ市独自の余暇センターの設置などである。こうした動きについては、私的セクターであるアソシアシオンが歴史的に担い展開してきたアニマシオン活動の公共的実現との評価があるが、アソシアシオンに対する権力的統合化あるいは排除の側面も否めない。他方、社会教育領域でのアソシアシオンが設置しているアニマシオン機関(centre d'animationなど)においては、近年パリ市との公契約(marche public)によって活動が展開されている。これらの活動そのものはアソシアシオンが自律的に展開しているとはいえ、パリ市との契約を結ばなければアソシアシオンの運営そのものが成り立たないといった状況があり「自律性」の内実は形式的なものに陥っている。 今日「アニマシオン」は「人々の関心を呼び覚ます教育的手段」の意味で使われることが多い。だがそこには、その実現を担う私的セクターと公セクターの葛藤を含む主体をめぐる問題と公共性のあり方の問題が内包されていることが明らかになった。
|