本研究は、フランスにおいてアニマシオンと呼ばれる活動の生成・展開過程の歴史的な検討および現状分析を通して、アニマシオン理念とその活動の性格とその制度的特質を明らかにした。その際、アニマシオン理念を生み出す活動基盤であったアソシアシオンの役割に着目しつつ解明をはかった。 1)1960年頃誕生したアニマシオンの理念は、急速な都市化と青少年の増加への対応としての国家政策の一環として、また19世紀以来の民衆教育運動のもつイデオロギー性と政治性の「中立化」を核として誕生した。そしてアニマシオンの制度は、施設計画と職員養成を中心に展開されてきた。近年は、青年の失業問題など社会問題へのアプローチとしてのアニマシオン理念の再定位が始まっている。 2)アニマシオン理念の制度としてのアニマシオン活動を担う職員養成と資格制度は、その特質において2面性をもっている。第1は、多様な社会的ニーズに応えるためのアニマトゥール資格の種類の拡大が、労働の質の確保には必ずしも向かわず、むしろ労働の細分化と狭隘化を促していることである。第2は、地域に密着した活動の基盤を広げ、現実に合わせての職の創出への努力をアニマトゥール養成機関であるアソシアシオンが担っていることである。 3)1970年代後半からの深刻な学業失敗(1'6checscolaire落第の大量発生など)の社会問題化への対応を引き受ける学校周辺での活動(activites periscolaires)において、アニマシオン理念とその活動が大きく取り入れられるようになっている。それは、学業失敗との闘いが、単に学業そのものだけでなく、学業成功に不可欠な文化活動の展開や社会性の形成の重要性が認知されてきたことによる。またアニマシオン理念そのものが、「社会問題との闘い」という新しい役割を内包する理念へと広がっている。
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