日本の大学における収入は、長年にわたって専ら政府予算、家計の負担、付属病院など事業収入で構成されてきた。大学システムの規模が小さければ、政府の負担によってのみ大学の運営をすることは可能であろうが、より多くの人々が大学教育を受けようとすると、財政規模は莫大になり、政府の負担だけでは賄えない。これは日本のみならず、高等教育人口がより大きいアメリカでも共通の現象である。本研究課題は、大学の授業料の検討であるが、授業料問題は政府の負担と家計の負担のバランスの問題でもある。本研究では、このバランスをまずデータをもって検討した。 他方、大学の経営にとっては、政府予算が削減されると、それを補う方法として授業料の値上げが考えられる。2004年の法人化以後は、国立大学も私立大学と同じように、経営の自立性が求められ、授業料設定も部分的に自由化された。経営の健全化からは、授業料値上げが必要な大学もある。しかし国立大学は国民に安価な授業料で、良質な高等教育機会を提供するという使命を有している。また授業料の値上げは、優秀な学生の確保の点から見て安易にはできない。このように授業料設定は、大学の使命、高等教育機会、大学の経営、学生募集の問題とも密接にかかわっている。 本研究は、日本とアメリカの大学での授業料問題を、高等教育費負担、高等教育機会、大学経営、学生募集などの観点から、理論的およびデータを分析し実証的に検討した。そこで得られた数々の知見は、政策的意義を持ち、今後の国立大学授業料水準を考える上で有用と思われる。
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