研究課題
基盤研究(C)
「コミュニケーションカ」は21世紀に育成すべき能力して多くの国で様々な教育法が試みられている。フランスもその例外ではないが、国際化に対応した能力と人材を育む目標が立てられながら、実際の教室で行われていたのは「言葉による説明と説得の技術」「理知と感情の統合」「共同体文化をベースにした議論法」などフランスで伝統的に行われていた「言葉と表現法」を磨く教育を徹底して行うことであった。市民教育では、一方で規則作りとその遵守を強調しながら、他方で「規則は状況に応じて変えるべきもの」というフランス革命以来の原則を基に「(問題となっている)言葉の定義→歴史的具体例→歴史的淵源→共通の概念定義→現状分析」という議論の一連の過程を踏んで現状変革を目指す。例えば人種差別についてなら、人種差別とは何か定義を出し合い、歴史から具体例を拾いだし、その淵源を探る。淵源特定により、討議グループに共通の言葉の概念を作り上げる。その上で初めて目前にある人種差別の討議が行われる。市民教育では、政治のシステム学習と同等に重視されるのがこのdebatと呼ばれる議論であり、討論を通して現状のシステムや法律が公正(juste)かどうか、公正でない場合はどう変えるべきかを帰納と演繹法を組み合わせながら一定の論理的手続を経て問題解決を図る。国語教育はこれと異なり、文法や綴り字などの規則を中心に学びながら、すべての構成要素は「表現」へと向かう。詩の朗読や演劇の暗唱が、国語教育の仕上げとされるのはそのためである。現地調査では、社会・経済的に異なる地域の学校観察を行ったが、これら2つのコミュニケーション教育の基本は変わらぬものの、移民の多い地区の学校では演劇などより具体的で感情表出へ向かう要素が強調されていた。コミュニケーション教育は言葉を扱う以上、その国や社会グループの価値や言語環境と切り離しては考えられず、OECDによる国際学力達成度試験を規範とする効率的思考表現やディベートなど技術育成の「いいとこ取り」は機能しないことが調査から示唆された。
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日本研究 35
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日文研 38
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Nihon Kenkyu Vol. 35
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BERD No.6
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『BERD』「特集 : 読解力(reading literacy)、日本の教育の何が問われているのか」 6号
The Future of Language Arts Education in Japan, edited by Yoshitugu Mochizuki, Meiji Tosho (in printing)