研究概要 |
研究の目的と概要:本研究では,美術教育関連の教員志望学生が,遠隔地域のへき地小規模校教員に対して,小中学校の教科・教科外学習に利用する「ヴィジュアル教材」を提供し教員コミュニティに参加するプログラムを開発し運営した。ここで述べるヴィジュアル教材とは小中学校の教科・教科外学習に利用される視覚的な学習材であり,教材・資料等の印刷物のほかに,web,プロジェクター出力におけるデータ,VTR画像であり,静止画像,動画,テキスト,音声データを複合的に組み合わせたものを指しており,広範な内容を含んでいる。この開発・運営を通して,「教員志望学生が教員コミュニティに周辺的に参加するプロセス」と同時に「依頼教師による学校を開くプロセス」を記述する。プログラムの内容:「(1)教員養成プログラムとしての側面」地域の教員から示された題材を理解し,ヴィジュアル教材へと構成する過程で教授内容と教授方法の統合が図られる。これは,単に教材作りの補助に終わらず,美術教育関連学生がその専門性を生かして,実務的に授業に対して責任を持つこととなる。こうした周辺的参加を通して教員コミュニティへの成員意識を高め,現場の教員が持っていない技能を示すことで,教員から指導を受けること以上に参加意識を高めることができる。「(2)地域貢献プログラムとしての側面」本プログラムは,学生によるヴィジュアル教材提供を通して,地域教員への視覚言語に関する技能を伝えるプログラムとなっている。「(3)「開かれた学校」研究としての側面」既存コミュニティへの参加する新参者は,コミュニティを開示すること,理解可能に可視化することで,新参者が参加可能なものにする。教員を目指す学生に対して教材作成を依頼することは,学校カリキュラムを開示することであり,解決すべき課題を可視化することである。この可視化プロセスに,形式的開きを超えた「開かれた学校」の可能性を指摘した。
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