1)昨年に引き続き、児童の学習における「新評価モデル」を提唱し、その「評価シート」の検証を行った。平成16年度はこれを「総合的な学習」を事例とし、その検証結果を論文として報告したが、本年度は、広島県や岡山県そして愛知県などの先進例を比較考証し、発展的な学習の評価方法を参照し、評価研究を行った。さらに、この研究課題の学問的基礎となる、欧米の質的研究の最新の動向を探る原著を訳書として著した。 2)長い歴史を持つ受験教育のもとでわが国の教師は、基礎学力(知識・理解・技能レベル)を身につけるためのノウハウをたくさん蓄積しているが、一定水準に達した児童生徒の学力をさらに伸ばす創造力とか思考力、問題解決力といった諸力を伸ばすノウハウは、ほとんど持ってないことが「聞き取り調査」で分かった。その対応として、教材の指導枠を学習指導要領から外すのが精一杯ということも新たにわかった。 3)今回の海外出張では、発展的な学習の一方向である、e-Learningの現状を探った。これを実現するシステム技術関係ではその要件を満たしているが、何を目的にどのような内容をどのような様式で設計するかについての定見が未知であり、これがこれを実現するボトルネックとなっていることが予見された。わが国では次の学習指導要領で「学力向上」を命題としようとしているが、この現実を直視したときこれをどう考えるべきか、発展的な学習」の新たなる再定義が問われることになった。
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