本研究は、三つの方向で異学年学習を進めた.第一は、総合学習における異学年である。特に、異学年集団が学年構成と異学年関係を調査した。その結果、同学年同士の集団では、会話が成立しないケースが多く見られた。2学年で構成された異学年集団では「教え-教えられる」という関係が固定され、上級生の指示を下級生が従うという形になりやすかった。3学年以上で構成されると、全ての学年の発言量が増加し、また、多種多様な役割を担うことが明らかになった。そのような学習者の変容を見ることによって、教師の発言が変化することが明らかになった。 次に分析したのは、教師間の異学年学習である。従来は少人数学習で多用されているティームティーチングを教師教育の場として捉え直した。一方の教師が年長の教師を主導する形式で行った。その結果、口頭で議論しても教師の行動の変容は見られなかった。さらに、一方の教師が実際に授業を行い、見せても変容が見られなかった。しかし、その後、他方の教師が実際に授業を行うことによって変容が見られた。「言って見せ、やってみせ、やらせてみせて」の3段階が教師の変容に必要であることを明らかにした。 次に分析したのは、大学研究室における異学年である。30歳代後半の中堅教師と20歳の学部学生がゼミ活動を通して学び合う姿を分析した。その結果、教師の発言が多いときは、学び合いが成立しないことが明らかになった。また、教師の発言が少なくても、年長者の発言が多いと、若年者の発言は少なかった。しかし、年長者の発言が少なくなると、若年者の発言が増加した。この増加の現員は、年長者が若年者の有能性に気づき、その発言に興味を持つためであることが明らかになった。 上記を詳細に分析し、3つの学会誌で発表し、一つの書籍を発表した。
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