本研究では、家庭科の教育内容の基礎部分として「生活主体についての理解」を中心に据えるという仮説のもとで、小・中・高校生と高齢者という二つの世代が、共に衣食住の生活活動に参加することを通して、何を学んでいくのかについて明らかにすることを目的とした。平成17年度には、一つには16年度と同様に小学校の料理クラブにおける「昔のおやつづくり」の活動を実施して、両世代の学びを明らかにした。さらに、16年度を含めてこの異世代交流活動に参加した子どもと参加していない子どもの間で、交流活動後の食(おやつ)生活に差異があるかどうかについても注目したが、ほとんど差はなかった。交流の質、回数に課題があると考えられた。第二には、高等学校家庭科の「高齢者の生活と福祉」題材の学習の導入時に、生活文化に関わることで参加してくれる高齢者の得意なこと(結果的に、布でつくる花、お手玉、巾着袋、亀のキーホルダー、竹とんぼ)を高校生が教わるという活動(二回)を取り入れた。高校生は、題材「高齢者の生活と福祉」の学習に関して、二回目の交流会直後の感想文で「関心・意欲」「技能・表現」の記述が最も多く、当題材学習後の感想文には「思考・判断」「知識・理解」の記述が多いという結果を示した。異世代交流活動によって、高校生は題材「高齢者の生活と福祉」の学習に意欲をもって取り組み、高齢者を生活主体の個人として捉えることで高齢期を自分の課題として考えることが出来るようになった。高齢者は、交流活動の実施のために多大な準備をすることになったが、交流会で高校生の実態を知り、お互いの理解を深めることが出来たことに喜びを感じていた。今後は、交流会の企画の段階から実施後の反省会まで両世代が参加することが不可欠であり、そうすることで「イベント」に終わらない継続的な真の交流が実現出来ると思われた。
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