研究概要 |
第一に、本研究の基礎となる先行研究の把握と、分析枠組の確認を行った。 本研究の場合、ライフヒストリーアプローチとは、インタビュー等による教師のライフストーリー(教師の「語り」)を一つの基本資料にしながらも、教師自身の実践記録や分析者の観察記録によって補足して、教師としてのカリキュラム経験と授業変革の歴史を、授業事実のレベルで丹念に洗い出し、実践的知識を明らかにしようという試みである。高井良健一(1995)が述べるように、教師のライフヒストリー研究は1980年代の「新しい」教育社会学の誕生と密接に関連している。その課題意識は教師の個人史を教師文化や地域社会の文化史との関連でとらえる方向へと向いている。また、教師の実践的知識の研究は、英米圏の授業研究や教師教育研究において、カーター(Carter,1990)のレビューに見られるように、現在有力な研究動向となっている。また、日本においても、教師の実践的知識に関する理論的考察(佐藤,1997)や、その実証的探究の試み(秋田,1998)があらわれている。 分析枠組みとして、教師の授業スタイルの変容を次の三視点を考えた。 (1)インタビューや実践記録などをもとにした教師の《ライフヒストリー》から巨視的に捉える視点。 (2)教師が自らの実践経験を反省的に振り返り実践をつくりかえていく《カリキュラム経験》という微視的に捉える視点。 (3)学習者が学んだ履歴である《学習記録》から捉える視点。 第二に、研究対象とした中学校と高等学校の国語科教師の国語科授業について、すでに記述された実践記録を集めた。まとまった量になる中学校教諭の遠藤瑛子の場合、それを実践目録にし、雑誌に掲載した。また、出来るだけ生徒の学習記録を収集し、遠藤瑛子の場合を目録化し雑誌に掲載した。その上で、教師にインタビューして、これまでの教職の歩みを授業を中心に聞いていった。これらのデータを併せて、ライフヒストリー的に再構成した。 第三に、上記の分析枠組みに基づきながら、整理しつつあるデータの分析を試みた。その成果を雑誌に発表した。
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