本研究の目的は、小山正孝が構築した「数学理解の2軸過程モデル」に基づく算数科授業改善の可能性を実践的研究によって明らかにし、小学校教員養成及び現職教育のあり方と具体的な方策に対する示唆を得ることである。そのため、本年度は、前年度の研究成果をもとに、(1)長期間の授業実践による2軸過程モデルの検討、(2)算数科の授業改善案の検討・作成、(3)2軸過程モデルに基づく算数科授業改善の原理と方法の検討を行った。その結果、以下のような研究成果が得られた。 第一に、4つの小学校における長期間の算数科の授業実践の分析・検討を通して、2軸過程モデルに基づく授業改善の原理と方法のさらなる精緻化を図ることができた。第二に、長期間の授業実践の分析・検討を4つの小学校の教員と共同して行うことによって、それぞれの小学校の児童や教師の実態に応じて、算数科の授業改善案を作成することができた。それによって、次年度に再度行う算数科の授業実践に向けての準備を整えることができた。そして、第三に、小学校教師の算数教育に対する意識の変容や児童の算数理解の変容を調査・分析することによって、教師が算数科の授業改善を行う際に2軸過程モデルに基づく授業改善の原理と方法が一つの有用な指針となることが明らかになり、児童の算数理解が深まるという結果が得られた。こうした本年度の研究成果を国内外の学会で発表し、主要な研究成果は「日本教科教育学会誌」第28巻第4号(2005、pp.61-70)に掲載された。 以上のことから、数学理解の2軸過程モデルに基づく算数科授業改善の可能性の検証と小学校教員養成及び現職教育に対する示唆の導出を目的とする次年度の実践的研究に対する準備を行うことができた。
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