次の4点に集約することができる。 (1)ディスカションをとりいれることによって、少なくとも学習者相互の「考え」を明るみに出すことができるということであり、また、各々が自らの「読み」の特徴を意識することができるようになるということである。このことは報告書に掲載した「空中ブランコ乗りのキキ」(別役実)を対象としたグループ・ディスカッションのなかにあらわれていた。 (2)本研究のなかで分析・検討の対象とした『リテラチャー・サークルとともに前進する』と『教室におけるピア・トーク』それぞれの論述に共通してとらえることのできるのは、「読むこと」の学習にディスカッションをとりいれることによって、それをリテラシー育成の場にしていこうとする発想であった。ここで言うリテラシーは「読み書き」にかぎらないものである。ディスカッションであるから、当然のことながら聞き・話すという活動も少なからず営まれる。読んで考えたことや感じたことを通じ合わせる活動にとりくむことによって、リテラシーは育ちゆくのだということをこれらの論考は教える。 (3)グループ・ディスカッションの工夫は「読むこと」の学習を活性化させていこうとする願いから生まれる。本研究においてめざしたのは巧みに話し合う力の育成ではない。むしろ、技術はつたなくてもよいのであって、むしろひとと会話する内容を書物の方に求めながら、一人ひとりの「ことばの力」を育てていくための方策の一つとしてグループ・ディスカッションがあるのだと言ってよい。 (4)アメリカにおいてグループ・ディスカッションの実践研究をあらわしたジェニ・デイが提案し実践した<ストラテジー・レッスン>のような営みを継続していくことは、結果的に児童たちのコミュニケーション能力を育てることにつながるだろう。そこでは読書の方法そのものが扱われているわけではない。むしろ、ことばを通じてメッセージをやりとりするための方策や各自の思考と認識を深いものにしていくための方策が扱われていた。この意味で、グループ・ディスカッションを中心とする「読むこと」の学習は児童・生徒の「ことばの力」を伸ばしていく可能性をそなえていると言うことができる。
|