研究概要 |
1.研究の目的:教職を目指す学生が「算数科カリキュラム」についてどのような認識を持っているか。またそれを編成,授業,評価・改善の3つの段階からとらえたとき,どのような特徴があるのかについて明らかにする。また学生の算数科カリキュラム観の変容の様相をとらえ,その望ましい育成方法について知見を得る。 2.研究の方法:これまでに開発してきた教員を対象とした調査項目に検討を加え,学部学生の算数科カリキュラム観を評価するための調査項目を開発した。この調査項目を用いて,授業「算数科教育論」を履修している学生129名(学部2年生94名,大学院生31名他)を対象として調査を実施した。この結果を分析するとともに,抽出学部学生を対象としたインタビューにより事例研究を進めた。 3.研究の結果:算数科カリキュラムの認識については,「算数教育の計画,授業,評価の総体」とする見方は学部生,院生のいずれの群においても高いが,学部生においては,相対的に「算数科の教育計画・指導計画」との回答が多く,大学院生にとっては,「実施する算数科の授業内容の全体」との回答が多かった。またカリキュラム観を編成,授業,評価・改善の3段階から考察し,それらをさらに詳細にみる11の評価尺度を開発した。 これらの評価尺度によると「授業の構成」に関する尺度以外のすべての尺度において,学部学生・院生の方が,現職教員の場合より評価尺度得点が高くなっていることが分かった。特に得点差の大きかった「編成の重点」,「授業展開の柔軟さ」,「評価の場面と時期」,「編成の評価と改善」等々の尺度については,学校での連絡・調整の困難さ,時間的な制約等の現実的な課題が背景にあるものと思われる。 4.今後の課題:調査対象となっている学部学生について継続的追跡調査を進め,教科カリキュラム編成能力開発の知見を得る。
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