本研究は「ピアノにあわせて歌うとハモらない」原因である12等分平均律の欠点を修正し、より音楽的に協和し、教育現場にも最適の音律を歴史的調律法を参照しつつ案出することを目的とし、以下のプロセスで進めてきた。 1.小中学校教科書の歌唱・器楽教材における調性分布 2.代表的古典音律の一般的特徴および24長短調の響きと長3和音の性質 3.純正およびピタゴラス長3度・5度とその間の同種音程の旋律・和音聴取テストと各種長3和音の聴取テスト 4.2005年にアメリカの音楽学者B.レーマンによって発見された古典音律「バッハ音律」の特徴分析 1.小中学校音楽教科書の歌唱・器楽教材240曲の調性分布は、ハ長調・ヘ長調・ト長調が上位3調で、占有率は74%に上り、24調の均等使用を第一義とする平均律を使用する根拠がないことが判明した。 2.上の調性分布に適合する古典音律は、ヴェルクマイスター第1技法第3、ヴァロッティ=ヤング6分の1調律法、2005年に発見された「バッハ音律」であることを考察の結果明示した。 3.聴取テストの結果、3和音では、純正5度702セントと平均律3度より狭い395セント3度への高評価がはっきりと現れた。一方2音のテストではばらつきがみられた。 4.バッハが自作『平均律クラヴィーア曲集』(これも今となっては誤訳だが)表紙に残した「バッハ音律」に調律したチェンバロを用いてレクチャーコンサートを実施し、上記曲集から数曲を実際の音楽で音律を確認した。
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