研究分担者 |
山下 昭 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (60036910)
飯田 慎司 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20184351)
清水 紀宏 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (50284451)
岩崎 秀樹 広島大学, 大学院教育学研究科, 教授 (50116539)
馬場 卓也 広島大学, 大学院国際協力研究科, 助教授 (00335720)
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研究概要 |
本研究の主たる目的は,普遍的な数学的関係の記号的記述による一般化が,子どもどうしの社会的相互作用を通じて,どのように進行するかということを明らかにすることであった。3年間にわたる研究は主に一般化に関する研究であったが,その概要をまとめると,次の4点になる。第1の研究は,数学的一般化の過程に関する理論的研究である。本研究では,2つの異なる一般化の過程に注目し,それらを内包的一般化および外延的一般化として定式化した。前者は,対象となっている記号に含意された意味を,既有の知識に関連づけながら同化し,既有の知識を発展させる認知プロセスとしてとらえられる一般化である。一方,後者は,記号に内在する意味を既有の知識に同化させることができないので,新たな知識を構成し,その知識の下で,既有の知識を統合する認知プロセスとしてとらえられる一般化である。本研究では,これら2つの一般化をデルフラーの一般化モデルに組み込みながら,「一般化分岐モデル」を提唱した。第2の研究は,分数除の指導の改善に関する研究である。具体的には,一般化分岐モデルに基づきながら,分数除の理解の困難性の要因を明確にした。その上で,比例のスキーマに基づく分数除の指導に代わる対案として,立式のためには比較のスキーマを前提にし,「×逆数」の説明には,既有の数学的知識を仮定する指導を提案した。さらに,対案に基づく分数除に関する教授実験を企画,実施し,その分析を通じてその有効性を例証した。第3の研究は,ヴィットマンのいう「教授単元」の理論的精緻化である。つまり,一般化分岐モデルによって教授単元を補完することによって,教授単元の継時的設計の可能性を指摘した。第4の研究は,小学校算数(数と計算)と中学校代数の接続を図る移行教材の視座から,一般化分岐モデルに基づきながら,「負の数の減法」の現行の指導を批判的に検討したことである。
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