中学校での、ことばへの認識を深め、言語運用能力を養うための文法学習のあり方を探るために本研究を立案した。そこで、平成16年度は、基礎的な研究を行うこととし、国語科および英語科の教科書の調査をし、また、中学校における文法指導の状況を知るため、授業を参観し教員から文法教育についての聞き取り調査を行った。 1.教科書調査 現行の教科書の中で、採択率の高いものを選んだ。国語科教科書では5社各3学年分、英語科数科書では6社各3学年分を対象とし、文法学習の項目を拾い出し、整理した。国語科教科書では、文法は言語事項に含まれるため、独立したコラム教材として提示される一方で、読むことや書くことの教材の中に、表現研究の観点から文法項目が取り込まれている場合があることが分かった。このことは、現代口語文法のおよその体系的知識の習得をめざす学習と、表現の場における機能的な文法的認識の能力を求める学習とが、その関係を未整理のままに併存させているとみなせる。英語科教科書では、言語材料の中に文法事項が含められているため、各教材の中に文法項目が配当されている。このことは、言語活動を優先させていて、機能文法にもとづくコミュニカティブなアプローチを想起させるが、教材の展開は必ずしもそうなっているのではない。つまり、体系的な文法事項の系統が背後に置かれていて、言語活動は文法項目を提示するために設定されているとも言える。にもかかわらず、体系的な文法の取り扱いを主としてはいないため、英語という言語を見る目としての文法は意識化しにくいと言える。 2.聞き取り調査 附属中学校の国語科教員からの文法の授業をふまえての聞き取りから、文法学習に対する生徒の意欲の低さ、指導方法や授業展開の定型化にともなう学習の沈滞、英語科との連絡がなくことばのメタ認識の弱さが分かった。
|