研究概要 |
本研究では,県内の企業と学校関係者,障害者本人,保護者間の連携により,社会調査,実際の就労場面を用いた評価,改善策の提示,再評価を行い,その結果を養護学校での就労支援を中心とした移行支援計画の構築に反映させることで,上記の問題の具体的な改善を図ることを目的とする。そのための足がかりとして,初年度は,県内の障害者就労の状況の把握やコミュニケーションが障害者の職場定着を促す可能性を示唆することができた。二年目となる今年度は,以下の調査と実践を同時並行的に進めた。 ある大学の食堂で初めて知的障害をもつ職員を雇用することとなった。そこで,知的障害をもつ職員に対し,(1)障害児教育を専門的に学ぶ学部4年の学生が就労揚面に付き添うかたちで直接的支援を行う,(2)大学教員及び障害児教育の専門知識及び臨床経験をもつ研究補助員が学生への助言及び職場への相談を行う,(3)群馬大学教員,県内養護学校教員,県内行政関係者,福祉関係者,養護学校等卒業生の保護者等の参加する月一回程度のミーティングで適切な支援の方法等について検討する,という3つの方法により支援を行った。また、知的障害者と共に働く職場職員に対するアンケート調査を行い,職場への支援として,知的障害者にとってわかりやすい指示の仕方や知的障害者の行動特性についての知識を職員に伝えることや,同僚職員とコミュニケーションがとれるようになるように知的障害をもつ職員と他の職員とをつなぐ支援の必要性が示唆された。 知的障害者の雇用を積極的に行っている県内の企業において,インタビュー調査及び障害者の就労の様子の調査を行った。心地よい職場環境や社長との信頼関係が職場定着の要因の一つとなることや,作業台の配置によって近くで仕事をする職員がすぐに手助けできる体制が作業効率を上げていることが示唆された。 県内の養護学校教員,保護者,福祉行政担当者,作業所職員などによる検討会を月1回程度実施した。障害者は期限付きの雇用やパート採用が多い状況や,障害者施設の入所がすぐにできない状況に対し,働けなくなった後の支援や安定した雇用体制の充実の必要性が示唆された。
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