研究概要 |
本研究では,県内の企業と学校関係者,障害者本人,保護者間の連携により,社会調査,実際の就労場面を用いた評価,改善案の提示,再評価を行い,その結果を養護学校での就労支援を中心とした個別移行支援計画の構築に反映させることで,知的障害者の就労が定着しにくいという問題の具体的な改善を図ることを目的とする。そのための足がかりとして,初年度は,県内の障害者就労の状況の全体状況の把握や,就労場面のビデオ分析により,コミュニケーションが障害者の職場定着を促す可能性を示唆することができた。二年目は,附属養護学校卒業生が採用された職場において,一年間にわたる参与観察を行う中で,知的障害者にとってわかりやすい指示の仕方や,知的障害者の行動特性についての知識を職員に伝えることの重要性,コミュニケーション場面で知的障害をもつ職員と同僚職員とをつなぐ支援の必要性が示唆された。 三年目となる今年度は,養護学校高等部の1名の生徒について,計3回実施された現場実習において参与観察を行い,その結果をもとに,当該生徒に対する支援方法の検討を行い,養護学校におけるより良い現場実習の方法について検討を行った。その結果,生徒への直接的な支援においては、身につけた能力を就労後に直接発揮できる職場で,教育的配慮と指導力を持った養護学校教員が指導・支援にあたる(職場に任せきりにしない)ことが,生徒の能力を効率良く伸ばせる環境であることが示唆された。また,職場職員への働きかけにおいては,実習生の障害特性についての説明が行われる際に,情報種による伝わりにくさや,理解を得るための条件(共感的な理解)があることが明らかとなった。加えて,長時間の参与観察により,従来の短時間の巡回指導では発見や対応の難しい課題があることが指摘された。その中で,養護学校教員が職場で長時間の指導・支援にあたることのできる支援体制の構築が提案された。
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