本年度は、アメリカとイギリスの状況の分析を通して、障害児の就学指導における親のパートナーシップ原理のあり方について検討した。 まず、アメリカについて、1975年の「全障害児教育法」を中心に親のパートナシップ原理に関する規定を分析した。その結果、アメリカでは、適正手続き保障(Due Process)が整備されており、子どもの教育措置の決定に親がパートナーとして積極的に関与していく権利が設けられていることが明らかにされた。また、各子どもに対して作成される個別教育計画(IEP)についても、その作成過程で親が積極的に関与していく権利が認められているなど、親のパートナーシップ原理が法的に明確に位置づけられていることが明らかにされた。 次に、イギリスについて1978年に提出された「ウォーノック報告」と同法に基づいて制定された「1981年教育法」、及び同法の修正法である「1993年教育法」と「1996年教育法」を中心に分析した。さらに、「2001年特別な教育的ニーズ・障害法」の規定も分析対象とした。その結果、「1981年教育法」とそれに続く法制度により、評価の過程に親が積極的に関与できる権利や、教育当局の教育措置の決定に対して不服申し立てを行う権利が認められるなど、親のパートナーシップ原理を積極的に保障しようとしていることが明らかにされた。また、親の不服申し立て事例の分析を行った結果、親の意思が尊重される傾向が強いことも指摘された。 現在、わが国においても特殊教育から特別支援教育への転換に伴い、中央教育審議会で今後の方向性について検討がなされているところであるが、親のパートナーシップ原理という視点が必要であることが示唆された。次年度は、本年度の外国における研究成果を踏まえて、わが国における実状を分析していく予定である。
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