本研究では、特別支援教育における障害児を持つ親のパートナーシップ原理のあり方について考察することを目的としたものである。本研究では、わが国の特殊教育から特別支援教育への転換に大きな影響を及ぼしたイギリスの歴史的展開・実態を分析することを通して、わが国に対する示唆を得るという比較教育学的方法を採った。 まず、「ウォーノック報告」と同報告に基づいて制定された「1981年教育法」、及び同法の修正法である「1993年教育法」と「1996年教育法」を中心に分析した。さらに、「2001年特別な教育的ニーズ・障害法」の規定も分析対象とした。その結果、「1981年教育法」とそれに続く法制度により、評価の過程に親が積極的に関与できる権利や、教育当局の教育措置の決定に対して不服申し立てを行う権利が認められるなど、親のパートナーシップ原理を積極的に保障しようとしていることが明らかにされた。また、親の不服申し立て事例の分析を行った結果、親の意思が尊重される傾向が強いことも指摘された。 現在、わが国においては特殊教育から特別支援教育への転換に伴い、平成17年12月に中央教育審議会で今後の方向性が示され、その方針に従い、平成18年3月から学校教育法の改正案が審議されている。特別支援教育においては「連携」・「協働」といった用語がキーワードとされているが、その中核に位置付くのは本人・親であることはいうまでもない。イギリスの実践は、今後の日本の特別支援教育の在り方を考える上で示唆に富むものであることが指摘された。
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