研究概要 |
本研究は,聴覚障害児のための簡易版手話発達評価尺度の制作と評価を目的とした。この発達尺度は、ろう学校で、手話の十分な専門的知識がない教師でも教室場面で実施が可能であるものとし、したがって包括的なものでなく、簡易的なものとした。またこの尺度を利用することが、手話を通して日本語の指導を行うための教育計画の形成を容易にするものとし、適応範囲を幼稚部から小学部に在席する幼児・児童(3歳から12歳まで)を対象とするものとした。平成16年度には、まず手話発達尺度を構成する検査項目を検討するための基礎資料となる、聴覚障害幼児・児童の手話発達に関する資料を充実させた。これまで著者の研究グループは聴覚障害乳幼児を対象に縦断的な観察を行ってきたが、これによって得られた手話獲得資料に加え、各年齢層を対象とした横断的な手話発達資料を補充した。平成17年度には、さらに海外で制作が試みられている手話発達評価尺度の開発研究を広範囲にレビューし、手話発達尺度の種類、用法、開発にあたっての問題点などを整理し、制作すべき発達尺度の内容について検討した。その結果、手話の表出に関してはチェックリスト尺度、手話の理解に関しては手話ビデオを用いた理解テストが有用であることが明らかになった。前年度までで収集した手話に関する資料をもとに、海外で試作されている尺度も参考に、上述の両評価尺度の制作を試みた。聴覚障害成人によるコンサルテーションにより、検査項目の修正、精選や内容の検討をさらに進め、より使いやすいものにした。
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