研究課題/領域番号 |
16530628
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
大豆生田 啓友 関東学院大学, 人間環境学部, 講師 (20259170)
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研究分担者 |
佐伯 胖 青山学院大学, 文学部, 教授 (60084448)
小林 紀子 小田原女子短期大学, 幼児教育学科, 助教授 (20331499)
高嶋 景子 聖セシリア女子短期大学, 幼児教育学科, 講師 (90369463)
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キーワード | 子育て支援 / 保育 / 正統的周辺参加(LPP)論 / 参加 / 育ち合い / 幼稚園・保育所 / 子育て支援施設 / 保育の日常性 |
研究概要 |
幼稚園や保育所、子育て支援施設など、保育の場における子育て支援の質について考察することが本研究の目的である。特にこの研究では、「子育て支援」という概念を制度論的な意味に限定せず、子どもの発達的変化、親(保護者)の発達的変化、保育者(支援者)の発達的変化などの関係性の中で捉えようとする試みであり、Lave, J. and Wenger, E.の「正統的周辺参加論(LPP論)」を分析の視点として一部援用して行おうとするものである。ここでは、保育の日常性の何気ない営みの中に子育て支援があると捉えて、実践的な営みの分析を行うことに主眼を置いている。中でも、子どもや保育者のみならず、親や地域の様々な人たちが保育という実践共同体への「参加」を通して、学び合い、育ち合いが生じることに注目をしながら研究を行っている。 第二年目にあたる本年度は、第一に昨年度実施したフィールドワークの継続研究を行った。この研究は、ある幼稚園のA児の姿の継続的なビデオ分析を行うことから出発し、さらにA児の母親へのインタビューおよび保育者へのインタビューを行ってきた。A児の母親へのインタビューからは、母親の立ち位置からA児の姿をどのように捉えているかの聞き取りを行うとともに、園とのかかわりにおいて母親自身がどのように子育てへの意識や実態を変化させているのかをインタビュー記述から分析を行ってきた。そこからは、A児の母親自身の物語性が浮かび上がるとともに、園とのかかわり(参加)の中で子育てへの意識が変容していることがわかった。A児は昨年の年少3歳児から年中4歳児となり、安定した自分らしさを発揮しつつある。教育課程外の預かり保育においては、異なった場での保育が行われ、年長組の幼児との親しい関係が生まれたりするなど、活動や関係の範囲を広げている。そのようなA児の安定感や活動および関係の広がりは母親自身の安定感にも結びついている。母親は預かり保育も含めたA児の園生活にとても満足し、子どもと長時間離れることも肯定的に受け止めており、逆に家庭での母子の時間が大切にされるような様子がうかがわれた。ここから、長時間保育の中での親子関係の距離感、あるいは園への参加の深まりについてどのように捉えるかが大きな課題となった。 第二には、子育てひろばにおける利用者が参加の度合いを増し、ボランティアスタッフとなっていくプロセスについてのインタビューにより研究を行った。その結果、子育てひろばを利用する親の参加のプロセスとして、模索期→交流期→安定期→充実期→活動参画期→活動拡大期といったおおまかな流れがあることがわかり、それをモデル化することを試みた。ひろばを利用する親子がどのようなプロセスでそこが居場所となり、参加の度合いを深めていくかがさらに今後の課題となった。
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