本研究は、青年期の聴覚障害学生を対象とした「聴覚障害学」の授業を通して、望ましい障害認識を促すための新たな指導法と教材を開発し、実践の中で評価検討を加えた上で、他の教育機関にも普及させていくことを目的として行っているものである。 本年度は研究の初年度として、聴覚障害学生に障害認識を促す授業のための教材の整備とそれを用いた指導法の構築を行うために、次の作業を行った。 1 これまでに聴覚障害学生が書いた「自分史」を通覧した結果、障害認識に至る過程で障害に関わる図書や資料、同じ障害を持つ他者からの情報が不足していることが明らかになった。 2 本学を卒業して社会で活躍している聴覚障害者の体験発表をビデオに収録し、字幕を挿入した後に編集してDVDに記録した。その映像を学生に視聴させ、他者の体験が障害の認識に役立つかどうかの評価を行った。現在そのデータを分析中である。 3 これまでに収集してきた聴覚障害者関係のテレビ番組、映像資料等を整理しつつある。その中から障害認識を促す指導の教材として使用できる資料を選択し、指導プログラムの一部を構成した。それに基づく授業を実際に試行し、用いた教材の有効性について検証を行った。現在そのデータを分析中であるが、効果的な指導法を構成する手がかりが得られつつある。 4 聴覚障害者及び関係者がこれまでに発表した図書、雑誌、新聞の中から障害認識に関係する記事、文章などを抽出して整理し、データベース化する作業を行ってきたが、来年度も継続する予定である。
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