文部(科学)省著作盲学校小学部点字教科書の変遷をたどることにより、盲児に対する教科指導上の配慮事項を明らかにすること、さらに通常の学級で学ぶ盲児童が使用している点字教科書の製作の実態を明らかにすることを目的に、今年度は次の研究に取り組んだ。 1.我が国の文部(科学)省著作点字教科書編纂の変遷の整理と分析 昭和49年から平成14年の間に文部(科学)省から発行された、10巻にわたる「盲学校小学部点字教科書編集資料」をもとに、国語と算数における検定教科書と点字教科書の内容を比較検討し、編集の基本的考え方と点訳上の配慮事項を分析した。国語では、特に点字の触読指導と漢字・漢語の取り扱い、算数では触察導入教材、図形の示し方、それに計算手段として珠算の技能習得に大きく配慮がなされていることが明らかになった。これらの成果は、日本特殊教育学会で発表し、広島大学大学院教育学研究科附属障害児教育実践センター紀要に掲載した。 2.ボランティア作成の点字教科書の編集方法の分析 今年度から通常の学級で点字を使って学習している盲児童の点字教科書が無償という措置がとられることとなった。それに伴い、我が国の主な点字出版所や点訳ボランティアによって「全国視覚障害児童・生徒教科書点訳連絡会」が全国的に組織され、その会議に出席して情報を収集した。さらに、点訳ボランティアを対象とした点字教科書作成の配慮に関する研究会に参加し、手で触る図の取り扱いについての必要な配慮事項を検討した。また、盲児が実際に使用したボランティア製作の算数点字教科書と文部科学省著作算数教科書の比較検討を行った。その結果、ボランティア製作の教科書には、目で見た絵(見取り図)をそのままの形で点図にされるなど、今後検討が必要な内容があることが明らかになった。この結果は、平成17年9月に開催される日本特殊教育学会に発表の予定である。
|