研究概要 |
研究代表者尾形庄悦は、非特異トーリック曲面の場合のFakhruddinの定理の拡張として、特異点も許す射影的トーリック曲面上のアンプル因子とnef因子の和である因子の完全線形系が元のふたつの因子の和として表せることを証明した。この研究成果をスペインでの国際研究集会で発表した。また、3次元非特異トーリック多様体上のアンプル因子が標準因子の2倍を加えたら正因子にならないとき、単生成的になることも示した。応用として、4次元非特異トーリック・ファノ多様体の反標準因子が単生成的になることを証明した。 研究分担者石田正典は、トーリック多様体の扇の理論から出発して、正則関数の実数ベキまでを許す代数幾何の世界が存在するのか否かを、実扇を例として解明を試みた。特に、実扇も含めた扇の完備化が可能であることの証明がエバルト氏との共同研究により得られた。 研究分担者原伸生は、非特異曲面とその上の有効因子の組(X, D)に対して定まる対数的標準閾値の正標数における類似概念であるF純閾値fpt(X, D)について研究した。(X, D)が有理数体上で定義される場合に、標数p還元で対応する(Xp, Dp)についてF純閾値fpt(Xp, Dp)のpへの依存度を研究した。さらに、これを組の判定イデアルのF跳躍指数の離散性と有理性に拡張した。この研究成果をアメリカでの国際研究集会で発表した。 研究分担者梶原健は、トロピカル幾何とトーリック幾何の関係を研究した。これまで知られていたトロピカル幾何学の定式化をトーリック多様体論の観点から、より代数幾何的に定式化し、トロピカル・トーリック多様体を定義した。ひとつの応用として、トロピカル非特異トーリック曲面上の交叉理論を完成させた。
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